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冠動脈疾患におけるステント治療が登場して30年が経ち,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)手技は初学者でも経験者に近い結果を出せるようになり臨床現場を大きく進歩させた.しかしながら,複雑病変のなかで最もハードルが高い慢性完全閉塞病変(CTO)の治療はいまだ簡単にはいかない.1980年台には,CTO治療の成功率は60%であり治療適応ではなかった.1990年台になるとCTO治療が行われるようになり,先人たちは「偽腔に入るとワイヤーがざらざらした動きになる」などと表現していた.当時初学者であった筆者には想像しかできず,実際に治療する機会もなく未知のことであった.加藤修先生(現 草津ハートセンター顧問)がCART法(Controlled Aantegrade and Retrograde Tracking)を発明したことで治療成績が約90%へと上昇し,広く行われるようになったが,本邦のレジストリーデータの解析では,順行性の成功率は上がっていないことが指摘された.CTO血管の中をどのようにワイヤーが進むのかという研究がされ,偽腔を拡大してしまうとワイヤーを支持する組織がなくなり,ワイヤーの軸がぶれることで先端を的確に誘導できなくなることがわかった.ワイヤーの操作は押す,引く,時計方向に回す,反時計方向に回すの4つの操作で行う.多くの術者は経験と感覚で操作を行ってきたが,これでは進めたいポイントにワイヤー先端を時計方向に90度回したほうが近いのに,反時計方向から270度回して組織の挫滅腔を広げてしまうといったことが生じ得る.そこで,このような無用の操作をなくすために本書の著者である桜橋渡辺病院の岡村篤徳先生が体系的に確立した方法が3Dワイヤリング法である.
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