特集 予防医療―包括的な提供を目指して
Overview
特定健診とがん検診
林 恒存
1
1かごしまオハナクリニック
キーワード:
メタボリックシンドローム
,
内臓脂肪
,
特定保健指導
,
健康寿命
,
生活習慣病
Keyword:
メタボリックシンドローム
,
内臓脂肪
,
特定保健指導
,
健康寿命
,
生活習慣病
pp.1039-1046
発行日 2020年12月1日
Published Date 2020/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika126_1039
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Summary
▪特定健診は「健康寿命の延伸」という日本の健康増進の本幹となる目標を達成するために不可欠な生活習慣病対策として,とくにメタボリックシンドロームの概念を基本に,動脈硬化危険因子を同定しその改善を個人レベルで促すための事業である.
▪特定健診で日本人のデータを加味した内臓脂肪蓄積基準と動脈硬化リスクの項目で介入の必要度を階層化し,それらの進行予防や改善の個別化を重視した特定保健指導をセットで実施している.
▪低受診率,費用対効果,サルコペニア・フレイルをはじめとする診断基準外の保健指導必要者への対応など,実施の意義に関連した継続的な課題がある.
▪日本のがん検診は,健康寿命の延伸という目標達成を見据え,早期発見による死亡率の減少を目的として,5種類の検診が対策型検診として推奨されている.
▪がん検診も,対策型検診としては不十分な住民受診率,実施検査項目の種類や精度検証,有効性検証など継続的な課題があり,また任意型検診では科学的根拠の妥当性,実施前後の受診者への利益・不利益を含めた情報提供のあり方は課題である.
▪対象者のがん関連リスクに基づく実施など,新たながん検診のあり方についても議論されている.
▪特定健診,がん検診のいずれも,その実施目的について,利益・不利益,限定的要素も含め,自治体・住民・医療従事者で共通の認識と理解のうえで住民型検診の受診率向上に取り組み,地域医療に従事する臨床医は,診療業務のみならず,全受診患者に予防教育,行動変容予防の機会を日常的に提供するツールとして,両検診の有効活用を期待したい.
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