特集 診療力を上げる! 症例問題集
第9章 血 液
総 論
神田 善伸
1
1自治医科大学附属病院血液科
pp.920-923
発行日 2019年4月1日
Published Date 2019/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika123_920
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正常と異常,疾患
血液疾患に限らず,あらゆる領域に適用することだと考えられるが,最初に「正常な状態」をしっかりと理解し,次に,どのような異常が加わったために疾患が発生しているかを考察することが重要である.体内で何らかの変化が生じようとすると,それに抗して恒常状態を維持しようとするように生体は反応する.しかし,その機構が破綻したときに疾患が発症するのである.たとえば,出血や溶血が生じた際には,酸素運搬能を維持するために赤血球の産生を増やして赤血球数の低下を留めようとする.この反応を把握するには血液検査で網状赤血球数の増加の有無をみればよい.遺伝性球状赤血球症では,定常状態においても赤血球数やヘモグロビン値は正常,しかしハプトグロビンは低下,網状赤血球数は増加しているという状態が観察される.すなわち,溶血で失われていく赤血球を,赤血球産生の増加によって補い,均衡を保っているのである.しかし,感染症などを契機に溶血が増悪すると,この均衡が崩れて貧血を生じる.溶血の増悪は血清ビリルビン値の上昇や血清LDH値の上昇,貧血の増悪は赤血球数,ヘモグロビン値の低下として捉えることができる.
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