特集 診療力を上げる! 症例問題集
第6章 膠原病・アレルギー
総 論
藤尾 圭志
1
1東京大学大学院医学系研究科内科学専攻アレルギー・リウマチ学
pp.794-797
発行日 2019年4月1日
Published Date 2019/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika123_794
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
炎症性疾患の考え方
膠原病・アレルギー疾患の多くは,発熱や炎症反応の上昇など炎症性疾患の特徴をもつことが多い.炎症性疾患の主な鑑別診断は,感染症,免疫疾患,悪性腫瘍があげられる(図1).このなかで,陽性項目が明確なのは膠原病を含む免疫疾患である.全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)については,分類基準が感度,特異度とも優れており,陽性所見が陰性であれば否定しやすい.関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA),炎症性筋疾患,混合性結合組織病は発熱や炎症反応上昇を伴うが,それぞれ特徴的な臓器所見がみられることが多く,診断の手がかりとなる.強皮症(systemic sclerosis:SSc)とSjögren症候群(Sjögren’s syndrome:SS)は通常発熱や炎症反応上昇を伴わないが,伴う場合には漿膜炎や関節炎などの臓器所見がみられることが多い.一方で,血管炎は臓器障害が腓腹筋などの一部の筋肉や特定の臓器などに限定されている場合があり,感染症や悪性腫瘍との鑑別に注意が必要である.成人Still病も感染症や悪性腫瘍との鑑別が難しい場合がある.感染症については培養や生検による検出がgold standardであるが,たとえば結核が否定できないが培養や生検による証拠がない場合に,抗結核薬の治療を行うことで鑑別が進むことがあり,臨床的な判断も重要となる.悪性腫瘍のなかでも,悪性リンパ腫については完全な除外は困難であり,治療前後に非典型的な経過をとる場合には,常に悪性リンパ腫が背景に存在する可能性に留意しておく必要がある.
© Nankodo Co., Ltd., 2019