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消化器内視鏡に携わる若手の医師は,誰しもがさらに上手になりたいと願い,指導医の指導を仰ぎ,ときには自分で新しいことにチャレンジしながら,日々の臨床に向き合っている.そんななか,診断・治療が上手くいき,自分自身を褒めてあげたくなるようなときもある反面,一つ間違えば大きな偶発症発生に繋がりかねない「ひやり」とする場面に遭遇することも決して少なくはないであろう.患者にとっては,内視鏡を施行した医師が誰であれ,「確実な内視鏡診断,確実な内視鏡治療」をされて当たり前である以上,若手であっても確実な知識と手技の習得は必須である.とはいえ,現在の消化器内視鏡の発展に伴い,覚えなくてはならない知識・手技は相当な量となっており,確実な習得は容易なことではない.また,時間に追われる日々の臨床という現実,そして指導医の数にも限りがある現状では,若手内視鏡医が消化器内視鏡に関連するすべての事項について詳細な指導を受けることは難しいのが実情であろう.このような状況においては,いわゆる「教科書」が指導医の役目を果たしてくれるが,消化器内視鏡全般について「指導医目線」で書かれた若手向きの「教科書」にはあまりお目にかかれない.
本書は,ほとんどの消化器内視鏡手技の基本について,「指導者目線」で丁寧に記されている.総論では専攻医終了までの目標,基本的なインフォームドコンセント,内視鏡診療の前に注意すべき点などについて詳しく記載されている.各論では各内視鏡手技について,基本的な事項,さまざまなコツ,偶発症とその対処法などが図も交えて詳しく記されており,基本的知識の習得には十分であろう.また,特筆すべきは「先輩ドクターからのアドバイス」といった項が設定されていることであり,これはまさに,執筆された指導医の方々が日頃から若手内視鏡医に話されている内容であると感じた.臨床にとってEBM(evidence-based medicine)は大変重要であるのは当たり前だが,もう一つのEBM?……experience-based medicineも日々の内視鏡教育においては重要であると筆者は考えている.本書には「経験の伝授」も効果的に記されており,若手の内視鏡医にとって優しい「教科書」であると思う.また,本書に記されている「経験」は若手だけではなく,指導医にとっても時として新しい情報となりうる.指導医の皆様も一度手にとって読まれてみてはいかがだろうか.
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