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はじめに
体内を内視しようとする試みの歴史は古く,内視鏡(endoscopy)の原型はポンペイ遺跡から発見されたギリシャ時代の肛門鏡・子宮鏡であるとされています.また,1800年代にドイツで,金属筒を呑剣師の胃に挿入したのが消化器内視鏡の原点とされています.日本では1949年東京大学医学部附属病院分院外科の医師により胃カメラが発明されました.その後,先端技術(特に物理工学と機械工学)の革命的進歩により今日の電子スコープへと発展をし,観察・診断のみならず,幅広い治療を行えるようになりました.われわれ消化器内視鏡技師は,内視鏡医や看護師とともに医療技術を駆使した高度な診断・治療を安全かつスムーズに行うために生まれた専門知識と技術を兼ね備えた日本消化器内視鏡学会認定の資格です.
私は学生時代から患者に接する業務に就きたいという願望がありました.そのとき,内視鏡室勤務の募集を見つけました.当時内視鏡についての知識は全くなく,業務内容も把握していませんでしたがとりあえず応募してみました.初めての内視鏡室勤務は「とにかく忙しい……」というのが印象です.内視鏡検査を受けたことがある方はご存じだと思いますが,決して楽な検査ではありません.検査前の患者の不安や恐怖心は多大なものです.これらをどれだけ取り除いてあげられるか,また,鎮静を得るために使用した薬が効きすぎた場合(呼吸停止を起こすこともある)の対処が検査のポイントとなります.内視鏡スコープの本数も検査件数より少ないため洗滌・消毒し再度使用するわけですが,次の検査に間に合うように準備するのは大変な作業です(洗滌・消毒時間は検査時間の数倍).しかし,消化管にできたポリープ(polyp)をポリープ切除術(polypectomy)で治療した後の安心した患者の様子を見ていると本当にやりがいを感じます.また,食道静脈瘤の破裂や活動期胃潰瘍からの動脈性出血での緊急内視鏡検査は迅速な対応が必要となります.患者の状態(バイタルサイン,検査データ,内視鏡画像の診断など)を把握し,医師が必要とする止血方法を予測し行動する必要があります.そのためには治療機器や鉗子類の特性・原理や使用方法を熟知し,最適な状態で使用できるよう保守・管理しなければなりません.迅速な行動ができ,治療が成功したときの達成感は医療従事者としてとても嬉しいものです.
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