特集 高齢者医療ハンドブック―高齢者医療におけるダイバーシティへの対応
第Ⅰ章 高齢者の特性を理解する~生理機能の加齢変化~
1.運動機能
松井 康素
1
Yasumoto MATSUI
1
1国立長寿医療研究センター整形外科
pp.572-577
発行日 2018年4月1日
Published Date 2018/4/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika121_572
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Summary
▪加齢に伴う筋力低下は主に下肢でみられ,男性でその割合が大きいものの,80歳代男性の筋力は,40歳代女性と同程度である.
▪筋力以上にバランス力の低下が急速に起きる.
▪運動器の代表的な要素である,骨,関節(軟骨),筋肉の加齢変化は,総じて言えばこれらの量的な減少が質的な劣化に伴って生じる.
▪閉経後女性では骨密度の減少が著しく,80歳代女性の3分の1以上が骨粗鬆症相当である,若年成人の70%未満となる.
▪X線上の変形性膝関節症の頻度はとくに女性で加齢とともに増加し,膝痛も女性に多いが,関節変形の程度と痛みは必ずしも一致しない.
▪加齢による筋肉量の減少は大腿四頭筋で最も著しく,その減少率は男性で年間0.8%であった.
▪運動機能の低下は筋肉,筋力の改善により予防可能で,運動や食事の改善など自主的努力を促すことが健康寿命延伸に肝要である.
© Nankodo Co., Ltd., 2018