1枚のシェーマ
分枝付き異種心膜ロールグラフトを用いた弓部大動脈置換術の第1例
窪田 博
1
1杏林大学心臓血管外科
pp.356
発行日 2024年5月1日
Published Date 2024/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kyobu77_356
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症例は2010年に手術を行った79歳,男性.Yグラフト置換術後1ヵ月で出現した急速拡大の胸部感染性仮性大動脈瘤に対して,ウマ心膜ロールグラフトによる上行大動脈置換術を予定した.本例に先立つこと7ヵ月,胃切除術後で大網を使えない患者の感染性上行大動脈瘤に対して同手術で良好な経過を得ていた.ところが,術中剝離をすすめると仮性瘤入口部が予想より遠位に拡大しており,弓部置換もやむなしと判断した.急遽考案した3分枝付きウマ心膜シートの設計図を術野の覆布に皮膚マーカで書き示し,冷却中に別テーブルで作成してもらい,弓部2分枝を置換した.真ん中の1分枝は側枝送血に用いた(図1).組織充塡は行わなかった.術後45ヵ月で他病死されるまで,感染の再燃やグラフト関連の合併症なく順調に経過した.
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