1枚のシェーマ
肺動脈原発巨大平滑筋肉腫の1切除例
田中 啓之
1
1久留米大学外科
pp.988
発行日 2019年11月1日
Published Date 2019/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kyobu72_988
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
東京医科歯科大学に勤務していた20年前に経験した,忘れることのできない症例である.肺動脈内から右室流出路・前室間溝を圧排し心囊内に発育する楕円球形の巨大腫瘍で,術前生検で平滑筋肉腫と診断された51歳・女性の症例である.腫瘍は前室間溝の上に位置し,心外膜と強く癒着・浸潤していた.体外循環下に心外膜からの剝離をすすめていくと,左前下行枝(LAD)の切除が腫瘍の遊離に不可欠であり,苦渋の決断のもと対角枝分岐直後からLADの中間部1/3を切除し,右室流出路心筋・主肺動脈全長とともに巨大腫瘍(600 g)を合併切除した.右室流出路から左右肺動脈分岐部まで生体弁付き人工血管で再建した.LADを切除したものの術中心筋梗塞にはならず順調に経過し,術後5年半に再発で死亡するまで,海外旅行など家族とともに元気に生活を楽しまれた.
© Nankodo Co., Ltd., 2019