今月の症例
妊孕性喪失を体験したAYA世代がん患者の看護
富山 淳江
1
1茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター/緩和ケア認定看護師
pp.653-658
発行日 2025年11月1日
Published Date 2025/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango30_653
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はじめに
思春期・若年成人期(adolescent and young adult:AYA)世代は,就学,就職,恋愛,結婚,出産などさまざまなライフイベントに直面する年代であり1),将来への夢を育む人生にとってかけがえのない時期でもある.しかし,AYA世代でがんに罹患した場合,がん治療の内容によっては妊孕性(妊娠する力)や生殖機能が失われることがあり,心理面へのケアや個々の患者のニーズに応じた対応が重要になってくる.
筆者は,がん相談支援センターに従事し,がん相談員としての役割を担っている.そこで子宮頸がんの診断を受け,放射線療法と化学療法の同時併用療法(concomitant chemoradiotherapy:CCRT)が予定されたAYA世代の患者と出会った.患者は,診断告知のあと,医師から提示された治療内容を受け入れていたが,初回化学療法目的の入院直前になって不安が高まり,がん相談支援センターを訪れた.そして,これまで医療者に話せていなかった妊孕性についての悩みを打ち明けた.
妊孕性を喪失する現実に直面したAYA世代がん患者の抱える葛藤について,また,不安や恐怖などさまざまな気持ちを抱きながら治療に向き合う患者とのかかわりについて,対話を通した看護実践を振り返り,以下に報告する.

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