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はじめに
放射線療法を受ける患者数は増加しており,2019年に放射線療法を受けた患者は28万3,000人と推定され,全がんに対する放射線療法適応率は23.7%と算出されている1).放射線療法の適応は治癒を目指す治療,局所の腫瘍増大を制御するために行う治療,術前術後の補助として行われる治療など幅広い.放射線療法はがん薬物療法と併用されることも多く,さまざまながん種で用いられている.放射線療法には放射線の種類や照射方法によってさまざまな治療が存在するが,ここではX線を用いた外部照射による放射線療法に焦点を当てる.
放射線が標的とするのはがん細胞のDNAで,放射線によりDNAを損傷することによって細胞死にいたり治療効果が得られる2).しかし正常細胞でもDNAの損傷が生じるため,さまざまな有害事象が発生する.とくに細胞分裂の頻度が高い皮膚上皮は放射線感受性が高いため,急性有害事象である放射線皮膚炎が生じやすい2).また皮膚表面の放射線量が高く,摩擦が加わりやすい部位は放射線皮膚炎が発生しやすく重症化する傾向がある.
放射線皮膚炎が重症化すると,疼痛が強く患者の生活の質に影響を及ぼすため,放射線皮膚炎の予防ケアと早期治癒のための治療ケアが重要である.放射線皮膚炎の予防は患者のセルフケアに委ねられているため,多くの施設では放射線療法開始前にセルフケア指導が行われている.また放射線皮膚炎が発生したあとは治療ケアが行われるが,湿性落屑を伴う重症放射線皮膚炎の場合は痛みが強く,患者の負担も大きくなる.患者は放射線皮膚炎以外にも有害事象が生じているケースも多いため,なるべく負担の少ないケアを検討する必要がある.ただし急性有害事象の放射線皮膚炎は照射が終了し,一定期間を経ることで回復する点も特徴である.

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