- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
リンチ症候群(lynch syndrome:LS)は,DNAミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントを主な原因とする遺伝性疾患である.若年性,多発性の大腸がんや,子宮内膜がんをはじめとし,さまざまな関連腫瘍が発生するが,定期的なサーベイランス(一般のがん検診ではなく,特徴に合わせてきめ細かく計画的な検診を行うこと)での早期発見,早期治療や,予防治療により,生命予後延長に寄与する.表1にLSの主な関連腫瘍に対するサーベイランスの目安を示す.一方,人によっては遺伝性を知ることでの将来のがん罹患による健康や生活などへの不安といった精神的苦痛,定期受診や検査に伴う時間的拘束や費用負担,ライフイベントへの影響に対する懸念などの社会的苦痛,体質を受け継いだ・受け継がせるかもしれないことへの葛藤,血縁者との関係性の変化などさまざまな苦悩を生じることもある.そのため,遺伝性腫瘍が疑われた場合は,患者ががんと遺伝,対策に関する正確な情報を理解したうえで,患者自身と血縁者への対応などを意思決定していけるよう支援することが必要である.遺伝カウンセリングでの専門的支援も望まれるため,診療部門と臨床遺伝部門との連携も重要である.
筆者は,がん看護専門看護師およびがんゲノム医療コーディネーターとして外来で活動し,看護支援の一つとして,保険や臨床研究でのがん遺伝子パネル検査や単一遺伝子検査の受検の意思決定支援や結果説明時の結果に応じた支援,二次的所見を認めた際の遺伝カウンセリング受診の意思決定支援,臨床遺伝部門との支援調整を担っている.
今回,臨床研究での遺伝子検査の結果,LSが疑われた若年卵巣がん患者が遺伝カウンセリングを受診するか迷い,その意思決定支援を行ったため,以下に報告する.

© Nankodo Co., Ltd., 2025