- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
わが国では,2019年6月にがん遺伝子パネル検査が保険適用となった.当院は同年10月からゲノム外来を開設し,がんゲノム医療拠点病院と認定され,年間約360例のがん遺伝子パネル検査を実施している.検査の適応となる患者は,「標準治療がない固形がん患者または局所進行もしくは転移が認められる標準治療が終了となった固形がん患者(終了が見込まれる者を含む)」と定義されており,主治医からBSC (best supportive care)やレジメン変更,治療の選択肢が少ないことを説明されている状況が多い.遺伝子パネル検査によって患者は新たな治療の選択肢が増えることに対し期待をもつ一方で,遺伝子異常に合った治療につながるのは約10~13%1,2)と報告されており,大半の患者が治療につながる結果とはならない.患者・家族のなかには,大きな落胆や今後の気がかりを表出する方も少なくない.また,がん遺伝子パネル検査を受けることで,意図せず遺伝性腫瘍の二次的所見が認められる可能性があるため,その人にとって知る権利と知らないでいる権利があり,それぞれメリット,デメリットを理解し,意思決定支援を行うことが必要になる.当院はがん遺伝子パネル検査を受ける患者・家族に対し,がんゲノム医療コーディネーターである看護師2名が検査のオリエンテーションから検査同意取得時の説明補助,結果説明のすべてにかかわり,検査にまつわる意思決定支援や心理サポートなどを行っている.筆者はがん性疼痛看護認定看護師とがんゲノム医療コーディネーターの両方の役割を担い,がん遺伝子パネル検査を受ける患者・家族と向き合いサポートしてきた.今回,がん遺伝子パネル検査をとおし,気持ちのつらさやこれからの過ごし方の意思決定について支援した患者へのかかわりを報告する.
© Nankodo Co., Ltd., 2025