今月の症例
多発骨転移で育児ができないつらさを抱えたAYA世代患者とのかかわりからの学び
清原 文
1
1国立病院機構 高崎総合医療センター看護部/がん看護専門看護師
pp.349-353
発行日 2024年5月1日
Published Date 2024/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango29_349
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はじめに
AYA (adolescent and young adult)世代とは,15歳から39歳までの思春期から若年成人期にある人々をさす.この世代に発症するがんは,ほかの世代に比べて患者数が少なく,疾患構成が多様であることから,医療従事者にとって,診療や相談支援の経験が蓄積されにくいという特徴がある.また,就学,就労,結婚,妊娠育児などのライフイベントが重なる時期であり,心理社会的状況もさまざまであることから,多くのアンメットニーズ⁎を抱えているといわれている.2022年8月に厚生労働省より示された「がん診療連携拠点病院等の整備に関する指針」では,指定要件として「多職種からなるAYA世代支援チームを設置することが望ましい」2)と明記されたことから,全国の医療施設で,AYA世代支援を行う体制を整える機運が高まっている.
当院でも,昨年AYAサポートチームが活動を開始した.今回,当院で外来化学療法を行う子育て中のAYA世代患者へのかかわりをとおして,AYA世代患者のもつ「希望をもって前向きに生きる力」を信じ支えることの大切さを学んだため,以下に報告する.
患者紹介
Aさん.会社員(育児休暇取得中),30代,女性,腎がん,全身性の骨転移.
骨転移による病的骨折のリスクが高く,日常生活に多くの制限があった.家族は,夫,長女(未就学児),次女(乳児)の四人暮らしであるが,病的骨折を避けるため,医師からは子どもを抱き上げるなど体に負担がかかることは控えるよう説明を受けていた.そのため,子どもの世話のほとんどは夫や夫の家族に任せていた.
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