増刊号特集 泌尿器科処方のすべて─すぐに使える実践ガイド
10 周術期
術後愁訴と合併症
せん妄
秋月 伸哉
1
1千葉県がんセンター精神腫瘍科
pp.280-282
発行日 2016年4月5日
Published Date 2016/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413205659
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疾患の概要
せん妄は身体疾患や薬剤を原因として引き起こされる意識障害の一種で,睡眠障害,注意障害,精神運動興奮,幻覚,妄想など,多彩な精神症状を伴う.せん妄は精神的苦痛を伴う体験であることが多く,また転倒,転落など医療安全上の問題,同意能力の低下により意思決定や適切な身体疾患の治療に支障を来す問題,患者の尊厳の問題など,医療現場における影響も幅広い.有病率は患者の基礎疾患や年齢,受けている治療などにより大きく異なり,入院中の高齢患者では10〜40%,術後患者やICUでは30%程度,人工呼吸器管理中のICU患者で80%にのぼると報告されている.
最も重要なせん妄治療法は,原因となっている身体疾患の改善や薬剤の中止だが,せん妄の治療,症状コントロール目的で薬物療法も行われる.せん妄の機序は十分に解明されていないが,脳内のアセチルコリン欠乏,ドパミン過剰などが考えられており,抗精神病薬が治療に用いられる.薬物療法の目標も,苦痛緩和や安全管理など,患者の状態によって異なる.
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