今月の症例
発達障害の疑いがある終末期がん患者とのかかわり ~困難感を覚えるスタッフの前向きにケアをする気持ちを支援できた事例~
嶋田 千春
1
Chiharu SHIMADA
1
1藤沢湘南台病院緩和ケア病棟/緩和ケア認定看護師
pp.665-667
発行日 2023年9月1日
Published Date 2023/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango28_665
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はじめに
2004年に制定された発達障害支援法では,発達障害は「自閉症,アスペルガー症候群そのほかの広汎性発達障害,学習障害,注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」1)と定義している.小児期に診断されることの多い疾患であるが,近年アスペルガー症候群や広汎性発達障害が注目されはじめて以降,とくに成人におけるメンタルヘルス問題の背景に発達障害の存在がある症例が多く報告されるようになった2).発達障害には衝動性,多動,コミュニケーションの特徴,こだわり,感覚の過敏さなどそれぞれの障害に固有の発達上の特徴があるが,いずれも外見的にわかるものではない1).とくにコミュニケーションで問題になりやすいのが周囲の人々を,自分が求めるようにふるまわせる「操作性」である3).とくに,緩和ケア病棟(PCU)にいる看護師は患者の希望に沿ったケアを提供したいという気持ちをもってケアに臨んでいることが多い.そのため,患者が希望するさまざまな要望に巻き込まれてしまう傾向がある.
今回,診断はされていないが,非常にこだわりが強く,気分の変動が顕著にみられる発達障害の疑いがあるがん終末期の患者とかかわる過程のなかで,患者の要望に巻き込まれながらも,チームとして日々支援の方向性について話し合いケアを提供することができた事例を報告する.
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