特集 がん薬物療法の看護技術
第Ⅳ章 治療経過に伴う患者の“そのとき”に寄り添う
レイトライン×治療希望と意思決定
入江 佳子
1
1筑波大学附属病院看護部/がん看護専門看護師,緩和ケア認定看護師
pp.501-504
発行日 2023年6月15日
Published Date 2023/6/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango28_501
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はじめに
治療ラインはレジメンごとの順番で,初めての治療をファーストライン(一次治療),次をセカンドライン(二次治療)と示す.レジメンは薬物療法を行ううえで,薬剤の用量や用法,治療期間を明記した治療計画1)をいい,がん腫やバイオマーカーなどに応じて,標準治療のコンセンサスがガイドラインに示されている.進行,再発がん患者に対しては,すでに複数のレジメンが行われていることが多く,一般的に最終に近い標準治療を,レイトライン(後方治療)という.
レイトラインの治療中の患者は,先の見通しに対する不安が強く,現状の否認や思うように治療が継続できない苛立ち,自暴自棄になる場合もみられる.また,治療選択の際には,治療に対して過剰に期待をしたり,都合のわるい情報を避けるなど,冷静な判断ができない状況に陥っている場合もある.さらに,がんの進行に伴う心身の苦痛がある場合には,患者の意向を十分に尊重した意思決定が困難になる場合も起こりうる.レイトラインに近づいた患者の治療方針の意思決定には,包括的に患者をとらえ,先の見通しを立てながら支援することが必要である.
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