特集 がん薬物療法の看護技術
第Ⅱ章 スキンケア
スキン-テア×ハイリスク患者のケア ~テープテアへのアプローチ~
荒井 志保
1
,
谷澤 伸次
1
1筑波大学附属病院看護部/皮膚・排泄ケア特定認定看護師
pp.444-448
発行日 2023年6月15日
Published Date 2023/6/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango28_444
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はじめに
スキン-テア(皮膚裂傷)とは,摩擦・ずれにより皮膚が裂けて生じる真皮深層までの損傷である.転倒や打撲,患者の療養上の介助の際にも発生する.2014年に日本創傷・オストミー・失禁管理学会の実施したスキン-テアの実態調査では,発生時の状況としてテープの剥離によるスキン-テア(テープテア)が17.5%ともっとも多い状況であった1).
がん薬物療法を行う患者は,抗がん薬や分子標的治療薬が表皮の基底細胞に影響することで皮膚のバリア機能が低下し,乾燥やさまざまな皮膚症状を招くだけでなく,がんの進行に伴う低栄養や浮腫により皮膚は脆弱となる.昨今,高齢者ががん薬物療法を受けることも多く見受けられるようになり,療養の中でテープを使用する機会が多く,がん薬物療法と加齢に伴う皮膚変化によりテープテアの発生頻度が増えると予測される.
脆弱な皮膚とは,乾燥,紫斑,菲薄化,浮腫のある状態などを示し,スキン-テアの予防ケアを実践する必要がある.スキン-テアを予防するためには,発生リスクをアセスメントし,予防的スキンケアと皮膚の保護を行い,スキン-テアが発生した際には,患者に苦痛を与えることなく,適切な創傷処置を行うことが重要である.
本稿では,スキン-テアのリスクアセスメントと予防・ケア方法について述べるが,とくに前述した発生頻度の高いテープテアについて述べる.
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