特別寄稿
がん患者の“終労”支援 ~退職に関連した制度とその意思決定支援~
賢見 卓也
1
Takuya KEMMI
1
1NPO法人がんと暮らしを考える会 理事長,みる看る訪問看護ステーション 所長/看護師
pp.369-374
発行日 2023年5月1日
Published Date 2023/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango28_369
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はじめに
平成24年に施行された第2期がん対策基本計画で「9.がん患者の就労を含めた社会的な問題」が追加されてから約10年がたった.各がん関連学会において患者団体による積極的な啓発活動が功を奏し,平成30年度の患者体験調査報告書において「医療者から就労の継続に関するなんらかの説明を受けた」就労者は39.5%となっており医療機関においても成果がみられている1).同調査において「退職廃業した」と回答した人は19.8%で,年齢別では60歳未満は14.1%,60歳以上は22.5%と,60歳以上で優位に高かったことが明らかになった.
また,就労可能な20~65歳までの年齢で死亡した患者は,2021年の人口動態統計から44,648名2)でありこの年代における治療から終末期までのプロセスにおいて退職を決断した患者が多く含まれることが想定される(図1).
その一方で,退職に関連した支援(“終労”支援)方法に関しては整理される機会はほとんどみられない.そこで本稿では『退職の意思決定支援』『“終労”支援』としてその支援方法を整理する.
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