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日本の医療に,インフォームド・コンセントの概念が浸透してずいぶんと月日が経った.おまかせの医療から患者が自己決定する医療,患者主体の医療の実現ということで,カルテの開示や医療機関の広告規制の緩和,病院に関する情報提供,セカンドオピニオン等の対策が次々と打ち出された.それに伴って患者や家族はランダムな情報の中で自己決定を迫られる機会が増えてきた.今では,患者は,治療法は言うに及ばず,人工呼吸器や胃ろうなどの延命処置をするかどうかといった終末期医療の内容から,生活習慣や日常生活の細々としたことまで,実に多種多様なことを決めなくてはいけない.たとえ医療者から十分な情報が提供され,適切な説明を受けたとしても,ではどうするか,何を選択するかを患者が自分で決定するのは容易なことではないだろう.その決定を委ねられる家族はもっと負担が大きいだろう.特に最近は,高齢者の医療を巡って,高齢者がどんな医療をどこまで希望するのか,どういう最期を迎えたいのかということについての意思表示を求める声も盛んに聞かれる.これは,当事者にとっても家族にとっても,また医療者にとっても難しい選択である.
2月4日付の朝日新聞夕刊に,終末期の延命医療の選択に関する厚生労働省研究班の調査結果が報道されていた.調査は全国の2千名の男女を対象にしたアンケートで,回答率は48%.それによると,延命医療について家族と「十分に話し合っている」のはわずか5%で,「話し合ったことがある」が45%,「全く話し合ったことがない」が48%いたと言う.自分で判断できなくなった時のために誰か判断してくれる人を決めておくことについては73%が賛成だが,いざ自分が判断を頼まれたら「引き受ける」のは47%に留まり,「わからない」が39%,「引き受けない」が12%であった.終末期に人工呼吸器による治療を「望む」は8%,胃ろうを「望む」は8.6%といずれも低かった.
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