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第3期がん対策推進基本計画では,がん医療の充実としてがん薬物療法などの治療の発展とともに,支持療法の充実がチーム医療を通して行われることが望まれ,より早期からの緩和ケアの提供や就労支援など,がんとの共生における体制の整備や人材の育成が行われてきた.その時流のなかで外来化学療法の体制整備が進み,現在において治療環境は,外来が主体となっている.治療の進歩や支援する体制の整備が加速することで生存期間の延長が可能となり,がんサバイバーが増加しているのは周知の事実である.
外来診療が基本となるがん治療において,複雑な有害事象への対策や,高齢者・独居など複雑で多面的な問題を抱えた患者・家族の全人的ケアの提供が,より一層求められている.そのため,看護師は限られた時間のなかで患者のもつセルフケア能力を迅速に見極め,患者が安心して治療に参加できるよう支援することが急務である.そして,患者のセルフケアを支えるためには治療に伴うアドヒアランスを高めることが重要となる.
アドヒアランスは,“患者が積極的に治療方針の決定に参加し,その決定に従って治療を受けること”と定義されるとおり,患者が治療方針の決定に賛同し積極的に治療に臨むことを支えるのである.そのためケア提供者は,クライアント(患者)の治療に対する想いや価値観を尊重し,障壁について話し合い,治療決定(合意形成)にいたるまでの過程を支え続けることが望まれている.
これまで雑誌『がん看護』においてアドヒアランスは,2015年に朴,京盛(本企画者)らが特集「チームで取り組む経口抗がん薬」で初めて取り上げ,次いで2019年に本田,矢ヶ崎らが「服薬アドヒアランスを高める看護」として特集している.がん看護におけるアドヒアランスを考える際,服薬のみならず治療アドヒアランスも重要な影響を及ぼす概念であることから,今回は,治療・服薬のアドヒアランスに着目した特集とした.
また,アドヒアランスを考慮したケアは,がん薬物療法を受ける治療期から,疼痛管理を主体とした緩和ケアを必要とする時期におけるものがあり,本特集では多くの場面を想起できるよう,多方面の専門家に執筆いただいた.
アドヒアランスという言葉自体,わが国ではいまだ浸透しておらず,関連した研究も少ない.そこで,今回第一線で活動している専門看護師の皆様に国内外の研究をふまえながら現場のリアルな声とケアのあり方をご解説いただいた.本特集が“アドヒアランスを考慮したケア”とは何かを見つめ直す機会となり,ひいてはケア向上につながるものになれば幸いである.
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