- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
プロフィール&メッセージ
生まれ落ちた星座はcancer.その後小児がん看護に携わり,後進の指導にあたっていた私はがん歴11年のベテラン患者.今は再発乳がんと共存中です.とことんがんに縁があるならば,教科書にはない患者・看護教員として感じたリアルな実体験を,看護者そして患者さんと分かち合っていけたらなと思います.
乳がん治療と体の変化
最初の乳がんでは乳房部分切除術(乳房温存)と術後の放射線療法,ホルモン療法となりました.放射線療法はそれ自体痛みを伴いませんが間質性肺炎のリスクがあります.私の場合それよりつらかったのは照射部の熱傷です.もともと皮膚が弱かったせいか,右前胸部が日ごとに赤みを増し,服が触っただけでもひりひりと痛みを伴いました.夏だったことに加え,ホルモン療法の影響で滝のように流れる汗でマーキングが毎日薄れます.そこでほぼ毎回放射線技師により上書きされていくのですが,最後の方はその油性ペンにさえ痛みを感じました.私の場合週4回,全24回で追加照射も含め総照射量は60 Gyと,通常の40~50 Gyより多かったせいかもしれません.医師からフェノール・亜鉛華リニメントが処方されましたが,とにかく冷やすことがいちばんでした.そこで工夫したのが,ケーキなどについてくる小さな保冷剤をガーゼでくるんでブラジャーのカップに挟むという方法です.保冷材は,家や職場の冷凍庫に凍らせておき,適宜取り換えることで常に冷やすことができました.これはお金がかからない上とても効果のある方法で,何より胸が大きく見えるので一石二鳥です!
ホルモン療法は入院中からLH-RHアゴニスト製剤の注射とタモキシフェンクエン酸塩錠の内服が始まりました.通常なら徐々に起こる更年期障害がLH-RHアゴニスト製剤の注射後1週間で突然起きました.ホットフラッシュは場所も時間も関係なくやってきます.多量の発汗後は気化熱による悪寒がくるので,夜はそれによる不眠も続きました.心と体が「ちょ,ちょっと待ってよ,私の体はまだ女性なの! 急にそれを止めないで!」と叫んでいたのでしょう.当初はこのセクシュアリティにかかわる出来事をとても悲しく思いました.けれど自律神経には気のもちようが大きく作用すると思います.ですから「これは命が続く代償だ」と思うようにし,家のあちこちにうちわを置き,バッグや机の引き出しには扇子とタオルをセットで入れるようにしました.キッチンやパソコン周りには小さなファンを置いて作業に支障をきたさないようにしました.そしてグワッとくる暑さを「1人サファリ」,その後の寒さを「1人北極」と名付けてやり過ごすことにしました.また,浮遊性の眩暈がよく起こりましたが,雲の上を歩いているとファンタスティックに考えるようにしました.今でもこれらの症状はときどき起こります.もっともこのころの症状は私にとっては早く来てしまいましたが,それ相応の年齢になったら自然の摂理として起こるのでしょうが…….
© Nankodo Co., Ltd., 2020