連載 がんも身のうち ~患者と看護教員 一人二役 リアルレクチャー~ 【2】
人生2度目のがんになる
吉原 由実
YUMI YOSHIHARA
pp.375-378
発行日 2020年5月1日
Published Date 2020/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango25_375
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プロフィール&メッセージ
生まれ落ちた星座はcancer.その後小児がん看護に携わり,後進の指導にあたっていた私はがん歴11年のベテラン患者.今は再発乳がんと共存中です.とことんがんに縁があるならば,教科書にはない患者・看護教員として感じたリアルな実体験を,看護者そして患者さんと分かち合っていけたらなと思います.
乳がんです
医師は「乳がんだね」とさらりと言いました.その人生2度目のがん診断には怒りがこみ上げましたが,決まった以上はやるしかないという性分.「今日中にできる検査を全部やってください」とマンモグラフィ,超音波検査,CTそして生体組織採取検査まで.画像を見ると腫瘍はうずらの卵の大きさを超えていました.
家を出て5時間後に帰ったときには,再び正真正銘のがん患者になっていました.子宮がんの診断からわずか1年5ヵ月.もちろん因果関係はありませんが,家族に申し訳ない気持ちでいっぱいでした.長男は小学6年生,次男は小学1年生になった夏のことでした.がんと決まったら前回同様,まずは子どもの生活を考え,手術は夏休みにすることにしました.
けれど2度目のがんという事実はさすがに堪えていて,その夜は前には思わなかったことをいろいろ考えてしまいました.知人にお別れの準備をしておこうかな,この病院には緩和ケアもあるから最期はここになるのかな…….そんな弱気を吹き飛ばしたのはこんなことでした.もしかしたら不妊治療が影響しているのかもしれない.だとしたら命と引き換えに2人の子どもを授かったのだから,絶対治す! まずは5年生きる! 結果自然也,凡事徹底! と.患者はどんな泥の中にいても蓮の花を見つけようとするものです.
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