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看護師のアセスメント
せん妄は,なんらかの身体的要因によって生じる意識障害であり,エマージェンシーの状態である.とくに,病状進行期や終末期は原疾患の増悪とともに,多臓器不全が生じやすい.そのため,観察は単につじつまが合わない,危険行動があるなどにとどまらず,せん妄の発生要因(図1)を理解したうえで,全身状態の増悪に付随する各種症状のアセスメントがポイントである.
せん妄を発症した患者の半数は覚えており,そのうち8割が「非常につらい体験だった」と感じている1).せん妄を発症した患者は実行機能や抑うつ,不安などが増悪し,QOLが低下する2).実は,看護師はせん妄患者の8割を見逃しており,主な原因は低活動型せん妄,80歳以上,視覚障害,認知症のアセスメント不足3)と指摘されている.低活動型せん妄(表1)は,そのほかのせん妄と比べると活動量や発話量が低下しているため,“物静かな患者さん”としてとらえられ,時に抑うつ状態と間違えられやすく,せん妄が遷延化しやすい.また,ほかのサブタイプのせん妄と比べると死亡リスクがもっとも高い4)ため,低活動型せん妄の主な原因とされる代謝異常(脱水など)や臓器不全5)に関連したデータや症状のアセスメントとマネジメントは重要である.日常のバイタルサイン(体温や脈,血圧や呼吸状態といった数値)だけでなく,食事,排泄(排便・排尿),睡眠といった人間としての基本的欲求や感覚障害(視覚,聴覚など),皮膚や口腔内の状態を観察し,患者が何に苦痛を感じているのか対話することがせん妄のアセスメントやケアになる.せん妄症状は,時間~日単位で可逆的に変動するため,これらのアセスメントを的確に共有し,継続していくことが重要である.
代表的なせん妄アセスメントツールconfusion assessment method (CAM)とmemorial delirium assessment scale (MDAS)がある.CAMは,簡便な評価尺度として広く用いられており,4項目のうち1と2に異常を認め,かつ3または4のいずれかで異常が認められた場合にせん妄と診断する数分で行えるツールである.MDASは,オピオイドを使用しているがん患者のせん妄をアセスメントするために開発された.10項目10点以上でせん妄と診断,重症度を評価することができる.このほかにせん妄のアセスメント力を強化してくれるdelirium team approach program (DELTAプログラム)6)がある.3つのStepに分かれており,Step 1:せん妄リスクの評価,Step 2:せん妄症状の評価(看護師が現場で感じる患者に対する「何か変?」を具体的に評価),Step 3:せん妄の対応まで導いてくれる万能なツールである(図2).
© Nankodo Co., Ltd., 2020