特集 生活の視点で読み解く! 今日の緩和ケア ~患者になにが起こっているのか~
Ⅰ 食べる
悪心・嘔吐のケア
村上 真由美
1
1富山赤十字病院看護部/がん看護専門看護師
pp.405-407
発行日 2020年6月15日
Published Date 2020/6/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango25_405
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看護師のアセスメント
悪心・嘔吐を体験している患者は,前胸部から上腹部をさすりながら「ムカムカして気持ちわるくて」と表現することが多い.言葉で表現することがむずかしい患者であれば,眉間にしわを寄せたり,体位変換などの活動を嫌悪するなどの表情や行動の変化を通して表現することが多い.Support Team Assessment Schedule日本語版(STAS-J)症状版1)を使用し,悪心・嘔吐が患者に及ぼす影響を評価することも有用である(表1).嘔吐を伴う場合は,嘔吐することで悪心が緩和されることもある.悪心・嘔吐は,消化器,脳神経などのがんや手術・がん薬物療法・放射線療法などのがん集学的治療において多く出現する.また,オピオイドなど薬物療法や腹部の腫瘍の増大に伴い消化管の圧迫や便秘,脳転移,高カルシウム血症でも出現するため,積極的がん治療を終了しても続くこともある.過去の悪心・嘔吐の体験から大脳皮質が刺激され,「また吐いてしまうのではないだろうか」と,症状の出現を予期し悪心・嘔吐が出現することもある.症状緩和が困難な場合においては,不安や社会的役割の遂行がむずかしくなり,自己の存在価値が低下していると感じることがある.このように悪心・嘔吐はさまざまな要因に影響を受けるため,全人的苦痛(トータルペイン)の視点からアセスメントすることが重要である.
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