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在宅における服薬アドヒアランスの特徴と課題
がん患者の在宅療養においては,化学療法などの治療に伴う複雑な医療管理や病状からくる苦痛への症状マネジメントなどのセルフケアが重要となる.アドヒアランスは「患者の行動が医療従事者の提供した治療方針に同意し一致すること」で,患者の治療方針への積極的な参加や医療従事者とのコミュニケーションが重要視されており1),在宅がん患者へのかかわりにおいても重要な概念といえる.患者はがんと共生している一人の生活者であり,患者役割以外にも多くの役割を担っているため,在宅での服薬行動は患者の認識や生活環境に大きく影響される.そのため服薬アドヒアランスへのかかわりでは,がんを抱えながら患者がどのような療養生活を送っているのかを理解することが欠かせない.在宅での服薬アドヒアランスは,患者の療養生活に服薬行動を上手く組み込んでいけるような働きかけがなければ向上しない.とくにがん患者は,患者が自らの症状を認識し,服薬をはじめとした対処行動をとれなければ,苦痛が増大して在宅療養の継続が困難になることも多い.
在宅では,患者が家事や仕事に追われ薬を飲み忘れたり,食事時間がずれて2回分を同時服用したり,山のような残薬,医療機関で把握していない薬,受診時にもらったまま放置されている処方箋などを見かけることがある.近年では,高齢者世帯や独居,認知機能に問題のある在宅療養者の増加で,服薬状況の把握が困難なことも多い.さらに,核家族化によって療養生活をサポートしてくれる人的資源も多いとは言えない.地域によっては利用可能な薬局が近くになかったり,処方内容によっては薬の入手が困難な場合もある.また,化学療法や鎮痛薬の中には高額なものもあり経済的理由から薬に抵抗を示したり,ポリファーマシー,家族などの意見に影響されて服薬に拒否的な態度を示す患者もいる.このように在宅での服薬アドヒアランスに影響を与える要因は多岐に渡る.在宅での服薬支援の課題は,職種間の連携,生活能力に合った対応,服薬支援のための体制整備と言われており2),服薬アドヒアランスへのかかわりにおいても患者を中心としたチームで療養生活を支えていく環境づくりが大切になる.本稿では,在宅でのがん患者の服薬アドヒアランスへのかかわりについて考えてみたい.
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