Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Cuschieriら1)による腹腔鏡下膵体尾部切除術(laparoscopic distal pancreatectomy:LDP)に関する最初の報告は四半世紀前の1996年に遡る.開腹術では展開しづらい膵尾部から脾周囲の視野が特に良好であり,また切除後の消化管再建を要さないなど,鏡視下手術には最適な術式と思われた.しかし,この間,LDPが膵体尾部病変に対する術式のゴールドスタンダードとして広く浸透するにはいたらなかった.その大きな理由の一つとして,安全・確実な膵断端の処理法が定まらず,それに関連した術後膵液瘻への懸念が払拭されなかったことがある.やがて自動縫合器による膵実質切離と断端閉鎖法の簡便性や安全性,あるいはhand-sewnと比較した場合の非劣性が報告2~4)され,また自動縫合器自体の改良もすすみ,LDPにおける標準的な膵切離断端処理法として定着した.これに伴って近年ではLDPの施行症例数は急速に増加している.わが国でも2012年に,ようやく対象疾患を膵体尾部の良性または低悪性度病変に限定して,系統的リンパ節郭清を伴わないLDPが保険収載された.続いて2016年には,膵癌に対する系統的リンパ節郭清を伴うLDPが保険収載された(ただし周辺臓器や脈管の合併切除を併施しない症例に限る).さらに2020年4月にはロボット支援下膵尾側切除術(robot-assisted distal pancreatectomy:RDP)が保険収載されるにいたり,膵体尾部切除術にかかわるほぼすべての術式が低侵襲手術(minimally invasive surgery:MIS)として行えるようになった.したがって,今後もLDPの増加傾向はより顕著になるものと思われる5).
© Nankodo Co., Ltd., 2021