人工股関節全置換術後のスポーツ復帰に向けたリハビリテーション

Rehabilitation for return to sports after total hip arthloplasty

は じ め に

　人工股関節全置換術（THA）は変形性股関節症による歩行障害や疼痛など，日常生活動作に支障をきたした場合に選択される術式であり，これにより疼痛の消失，関節可動域の改善などの機能改善が得られ，生活の質（QOL）が向上する^1）とされる．元来スポーツ復帰をめざすものではなかったが，近年では術後のスポーツ活動の報告も散見される^2）．スポーツ活動において，インプラントの弛み^3）などが耐用年数を低下させる懸念があるものの，10年間の追跡調査でインプラントの摩耗に関しては変化がなかった^4）とされており，スポーツ復帰を推奨する肯定的なデータとなっている．そのため，現状では軽負荷の運動（ウォーキングやジョギングなど）や術前に実施していたスポーツ活動は部分的に許可されることが多く，各団体も同様の意見をもって治療を行っている^5～7）．

　当院ではTHA後のスポーツ復帰を希望する患者が他院から紹介され，スポーツ復帰を目的としたリハビリテーションを実施している．THAを予定している患者の希望の一つが『スポーツ復帰』であることも多いと感じるが，THA後のリハビリテーションにおいてはスポーツ復帰基準や治療内容に関してはコンセンサスが得られていない．本稿では，当院でTHA後のリハビリテーションを実施した症例の患者背景やスポーツ復帰に向けての復帰基準を紹介し，THA後のスポーツ復帰に向けてのリハビリテーションについて述べる．