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は じ め に
悪性骨腫瘍切除後再建術にはさまざまな方法が行われている.もっとも一般的に行われている再建法は腫瘍用人工関節置換術である.手技的にも簡便であり,比較的治療成績が安定していることが要因と考える.ほかに,欧米で用いられる同種骨移植やわが国を中心に用いられる自家処理骨移植,そして血管柄付き腓骨移植や骨延長術などが行われている.自家処理骨移植には,当初オートクレーブ処理が行われたが,合併症が頻発し,治療成績もわるく,近年では行われなくなった.現在では放射線処理,Pasteur処理,液体窒素処理などの方法が行われている.中でもわれわれは基本的に十分な骨強度を有する腫瘍骨に対して,液体窒素処理骨再建術を行ってきた.
悪性骨腫瘍手術において,術後感染はもっとも深刻な合併症の一つであるが,感染率は通常の整形外科手術より高率である.その要因として,化学療法に伴う免疫不全や腫瘍切除後の大きな死腔,軟部組織の状態不良や欠損,長時間の手術などがあげられる.中でも骨盤腫瘍手術では,感染率が30%以上にもなる1).脛骨近位部腫瘍手術においても感染率は15%以上と高率で,感染後の約40%は切断にいたると報告されている2).したがって感染の予防が非常に重要となる.インプラントに関する感染を予防するために,これまでさまざまな研究が報告されている3).中でも抗菌薬を加工した髄内釘4)や銀コーティングの人工関節5)などは,すでに臨床応用され良好な成績が報告されている.われわれも2005年からチタン製インプラントに対して,ヨードコーティングの研究に着手した.そしてその基礎研究の結果をもとに6),2008年から術後感染予防および治療を目的として,ヨードコーティングインプラントを使用した臨床研究を開始した.
本研究では,悪性骨腫瘍に対して腫瘍広範切除後にヨードコーティングインプラントを併用して液体窒素自家処理骨再建術を行った症例の治療成績を評価した.
© Nankodo Co., Ltd., 2022