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は じ め に
感染性偽関節・骨髄炎は整形外科の分野において治療に難渋する領域である.患者にとっては社会的,経済的,肉体的,精神的な不利益や苦痛を長期にわたって強いられ,場合によっては感染した四肢を失う可能性もあり,重篤な病態である.
偽関節の原因として感染は主因の一つである.すべての感染性偽関節・骨髄炎で臨床所見が顕在化(皮膚の発赤や熱感,排膿,開放創など)するとは限らないため,偽関節の症例では感染の有無を必ず判断する必要がある1).感染性偽関節であった場合,骨癒合を得るために感染を制御する必要がある.かつては感染治療過程と骨癒合を得る過程を同時並行してすすめるという治療の考え方もあったが,現在は感染の制御を先行し,その次の段階で骨再建のための処置を追加する段階的治療戦略が主流である1).
感染性偽関節・骨髄炎の治療のゴールは,① 感染の制圧,② 骨癒合の獲得,③ 骨長・アライメントの再建,④ 運動機能の再獲得である2).上記ゴールに到達するためには的確な壊死組織のデブリドマンと組織再生に必要な良好な軟部組織条件を再獲得する必要がある.そこで良好な軟部組織を再獲得するためには創外固定を用いたdistraction histogenesis,もしくは遊離組織移植(Masquelet法を併用する方法と併用しない方法を含む)が選択される.局所感染を制御した後にデブリドマン(腐骨切除)後に生じた骨欠損部の再建を行うことが必要である.この骨欠損部の再建に関して,2000年にMasqueletがinduced membrane technique(Masquelet法)を報告した3).文節型の骨欠損に対する既存の再建法には,創外固定器を用いたbone transport法(BT法)と血管柄付き骨移植法とがあったが,血管柄付き骨移植法を行う場合に要求されるmicro surgeryの技術を必要としないことやBT法を行う場合に考慮が必要な創外固定器関連合併症の懸念がないことなどの利点も多く,Masquelet法は現在骨再建方法として広く普及している4,5).その一方で,BT法は治療部位の安定性が得られやすいこと,また骨再建のためにdonorを必要とせず治療が患肢で完結するといった利点がある.
本稿では,感染性偽関節・骨髄炎に対するリング型創外固定器を用いたBT法について,その適応や治療の特徴に関して症例とともに検討し報告する.
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