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はじめに――リキッドバイオプシーとは
リキッドバイオプシーとは,血液,尿,唾液などの体液中に含まれる細胞,核酸,蛋白質,代謝物などの生体分子の解析から病態の把握をめざす病態診断技術の総称である.この用語は,2010年代に血液中に存在する循環腫瘍細胞(circulating tumor cells:CTC)の検出による診断法に与えられたものであり1,2),その後,核酸,蛋白質,代謝物などのさまざまな生体分子を対象とした解析法に対しても用いられるようになっている.現在では,循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA:ctDNA),疾患特異的なマイクロRNA(microRNA:miRNA)などの核酸分子や,癌細胞由来のエクソソームの検出による疾患診断法の開発が精力的にすすめられている(図1).リキッドバイオプシーは非侵襲的かつ簡便に施行することができ,同一症例に対して繰り返し施行することが可能であるため,診断だけでなく治療効果や予後の予測に有用であり,次世代の診断技術の基盤として期待が集まっている2,3).
骨・軟部腫瘍には,消化器癌,前立腺癌,婦人科癌などの存在診断,治療効果予測,再発リスクの予測,術後再発のモニタリングなどに用いられる血液腫瘍マーカーがきわめて少ない.2012年の『軟部腫瘍診療ガイドライン』では,「臨床検査値で異常を示す腫瘍は?」というクリニカルクエスチョンに対して「軟部腫瘍で特異的な腫瘍マーカーは一般的にはない」と記載されている4).癌腫と同様に乳酸脱水素酵素(LDH)の上昇を認めることがあるが,一般的には腫瘍サイズの大きな高悪性度軟部肉腫,あるいは多発性に転移して進行した軟部肉腫に限られる.このような背景から,肉腫細胞由来の生体分子を用いたリキッドバイオプシーの開発は,骨・軟部腫瘍の診療における新しいブレイクスルーとなる可能性があり,研究開発が精力的に行われている.本稿では,リキッドバイオプシーの骨・軟部腫瘍における研究開発の動向を生体分子別に述べ,本法の将来展望について論じる.
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