発行日 2012年1月1日
Published Date 2012/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2012157860
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72歳男。急性前骨髄球性白血病(APL)の診断で、modified AIDA療法、ATRA症候群予防にdexamethasonを併用投与した。ステロイド誘発性糖尿病にはインスリンを併用し、第5病日より白血球数の低下を認めた。第10病日より前頭部の間欠的頭痛を訴えたが脳神経症状なく、第13病日の左視力低下で左眼外転障害を認めた。CTでは左蝶形骨洞にニボーを認めた。左眼動脈血栓症および虚血に伴う外転障害を疑いglycerin、ozagrel soldiumを開始したが、翌朝に左眼球突出、顔面腫脹を認め、左眼の視力光覚弁、瞳孔不同、対光反射消失、瞼下垂、筋運動の全方向障害を認めた。MRIでは左上顎洞・蝶形骨洞炎があり、左内頸動脈のflow void sighは海綿静脈洞部で消失し、MRAではその頭尾側にも狭窄を認めた。以上より、鼻脳型ムーコル症を疑い、Liposomal amphotericin Bを開始したところ、左眼球突出は減少したが、第18病日に意識障害、右上下肢片麻痺が出現し、CTで左中大脳動脈領域の広範囲な急性期脳梗塞を認めた。Argatroban、glycerinを投与したが回復せず、両側肺炎を発症し第22病日に死亡した。経鼻的生検によりHE染色で炎症細胞の浸潤、Grocott染色で菌糸を認め、形態学的にムーコル症と診断した。
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