発行日 2004年1月1日
Published Date 2004/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2004126382
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60歳男.ぼんやりして口数が少なく,寝てばかりいた.神経学的所見では,意識はほぼ清明だがときに傾眠を認め,持続する無為,注意力の低下を認めた.高次脳機能検査では,HDS-Rが6点,WAIS-RはIQ 60であった.保続,観念運動失行動も認められた.脳神経系,感覚系,小脳系に異常はなかった.頭部CTと頭部MRIで左内包膝部に梗塞を認め,頭部MRAでは左内頸動脈に壁不整を認めた.頸動脈エコーでは左内頸動脈分岐部に高輝度のプラークを認め,SPECTでは両側前頭葉,左頭頂葉に血流低下を認めた.脳血栓症と診断し,ozagerl,glycerinにて治療を開始した.傾眠は急性期のみで改善したが,無為,注意力低下,健忘症は全く改善せず,保続,観念運動失行も改善しなかった.再度施行したSPECTでは前頭葉の血流は僅かに改善したが,数回施行したHDS-Rの結果は全て1桁であり,全く改善しなかった.以上より,小さな脳梗塞により,代謝性脳症,精神疾患,薬物中毒を疑わせる症状が生じることもあるため,無為,注意力低下,健忘症などを呈し,運動麻痺,感覚障害のない場合にも,脳血管障害の検索をすることが重要であると考えられた
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