発行日 2001年3月1日
Published Date 2001/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2001175046
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症例は64歳の男性で,嚥下困難で来院した.入院時SCC抗原が27ng/mlと著明な高値を示したがCYFRA抗原は正常であった.気管分岐部以下の中部食道に全周性の壁肥厚を認め,食道粘膜は浮腫状で,浅い潰瘍が多発していたが,明らかな悪性所見は認められなかった.潰瘍の辺縁には変性した扁平上皮細胞とそれらが融合した多核巨細胞を認め,単純ヘルペスウイルスI型に陽性であることから,ヘルペス食道炎と診断した.入院後,自覚症状は次第に軽減したため,aciclovir(ACV)は投与せずに経過を観察した.内視鏡検査の再検では,食道は軽度のびらんを残すのみで,粘膜の浮腫と内腔の狭窄は消失していた.SCC抗原も7.2ng/mlまで低下しており,退院となった.良性疾患でSCC抗原が20ng/ml以上に上昇することはまれであり,本症は食道粘膜に持続する強い炎症を反映したものと推定された
©Nankodo Co., Ltd., 2001