発行日 2008年5月1日
Published Date 2008/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2008208425
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76歳女。30歳代より頸部腫瘤に気付くも放置していたが、7ヵ月前より呼吸困難、高血圧の出現で近医を受診し、頸部巨大腫瘤を指摘された。気管は縦隔内で5mmに狭窄し、甲状腺濾胞腺腫または濾胞癌と診断され、腫瘍縮小目的に経皮的エタノール注入を施行されていたが転居に伴い紹介受診となった。閉塞性換気障害を認め、X線では上縦隔に10cm大の腫瘍を認め、気管は狭窄・蛇行していた。CTにて左頸部から縦隔内気管右側に達する内部不均一で辺縁は比較的整な巨大腫瘍を認め、MRIでは腫瘍の明らかな気管、大血管への浸潤は認めなかった。巨大甲状腺腫瘍の縦隔進展により高度気管狭窄を伴い気管内挿管困難が予想されたが、摘出術を施行した。右鼠径部より経皮的心肺補助装着のもと、頸部襟状切開を行い頸部腫瘍を剥離後、胸骨正中切開を追加し周囲大血管・気管からの剥離を進めて腫瘍を摘出した。病理所見では、腫瘍は14×10×5cmで線維皮膜に覆われ、軟らかく褐色充実性であった。軽度異型を伴う球状核と好酸性細胞が主体で静脈侵襲を認め、好酸性細胞型濾胞癌と診断した。術後合併症を併発したがいずれも改善した。術後CTにて前右方に偏位していた気管は胸部正中に位置し、径25mmまで改善した。術後2週間で退院し、術後1年現在再発は認めていない。
©Nankodo Co., Ltd., 2008