特集 生命システムのロバストネスとは何か?
【第1部】細胞レベルのロバストネス 細胞は信号のばらつきを補償して情報をロバストに伝達する
宇田 新介
1
,
黒田 真也
1東京大学 大学院理学系研究科生物科学専攻
キーワード:
神経成長因子
,
PC12細胞
,
シグナルトランスダクション
,
遺伝子発現調節
,
情報理論
,
成長因子
,
表現型
,
c-fos癌原遺伝子タンパク質
,
EGR1転写因子
,
分子イメージング
,
単一細胞解析
Keyword:
Growth Substances
,
Gene Expression Regulation
,
Information Theory
,
Phenotype
,
Signal Transduction
,
PC12 Cells
,
Proto-Oncogene Proteins c-fos
,
Nerve Growth Factor
,
Early Growth Response Protein 1
,
Single-Cell Analysis
,
Molecular Imaging
pp.43-47
発行日 2013年12月22日
Published Date 2013/12/22
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細胞は,細胞内シグナルによって情報伝達を行い,分化などの表現型を制御している.しかし,細胞ごとにシグナル強度がばらつく中で,どれくらいの情報量をどのように伝達しているのかについてはほとんど不明であった.そこで今回,筆者らは,以前に開発した細胞の信号を1細胞レベルで定量的かつ大規模に測定するQIC法を用いて,細胞が伝達している情報量をシャノンの情報理論の枠組みに基づき,解析を行った.その結果,成長因子などの刺激で細胞内部へ伝達されている情報量は約1ビットであった.さらに様々な経路の阻害剤を加えたところ,シグナル強度は下がるにもかかわらず,情報量は保たれた.また,情報をロバストに伝達する仕組みの1つとして,阻害剤によってある経路が阻害されても,阻害されていない経路が情報量を補償して合計の情報量を保つことがわかった.これらより細胞は外乱に対して補償的な情報伝達を行い,情報量をロバストに保つ仕組みを有すると考えられる.
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