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人生とは人との出会いの連続であると私はよく考える.この様に考える思考パターンは私がソーシャルワーカーという職業柄,毎日人との出会いの中で仕事をしている為か,又は全く個人的な性格とか感受性故に人との出会いにsensitiveになっているせいか,又はその双方か,よくわからぬが,ともかく私は毎日出会う1人1人に興味,関心そして刺激やら期待を抱く習慣をいつしか身につけている.私はこの出会いを自分の感じ方と基準でごく主観的に受けとめているが,私はこれを大切にしたいと思う.何故なら,人との出会いは人格と人格の出会いであり,この中に自分の人生に向う姿勢―生き方―の手がかりを得ることがあるからである.こう書くと私は至極ロマンティストだとか,精神主義者だと思う人がいると思うが,私は決してそうではない.それは私の感受性のなすところと御理解いただきたい.
私は今迄の人生で一体どの位の人に出会って来ただろうかと考えてみた.この世に生を受けてこの方,30数年来,恐らく,身近かな家族,親戚,友人,恩師,同僚,仕事上のつながりの人,近隣の人,行きずりの人等々を含めてざっと数千人の人々に出会っているだろう.いやそれ以上かもしれない.この数は定かでないが,時間の経過と共にこれらの人人との出会いを通して現在の自分があると思う.しかしながら数多く出会った人々の中に過去,現在を問わず,人には必ず印象に残っている人,忘れ難い人,友人でありたい人,手本にしたい人等々,何らかのかたちで自分に影響を及ぼし,かかわりあいがある様な一群の人々がいると思う.これらの人々は.何らかのかたちで物事に対する考え方や感じ方を示唆してくれた人であり共に共鳴,共感したりする人である.そしてこれらの人々との出会いの中で私は成長し,今後も成長したいと思うのである.それ故,私が今日ソーシャルワーカーという職業につき,いささかでも人さまの役に立つ人間であるとすれば,これは全て今迄出会って来た人々からの教えや励ましの賜物と思う.私もいろいろの人との出会いの中で随分変容した様に思い,時に我ながら驚くことがある.この様に時として自分を省み,洞察する時私は「人との出会いは時にはその人の人生を変え得る」と確信することがある.この認識に立ち,職業人としての自分をふり返ると「私は実に責任重大な仕事をしているのだ」と背筋が寒くなり身振いをする思いをよくするのである.
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