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バイオインダストリーの世界に生きて,私は非常に運の良い人間であると思っている.5年ほど前まで海外で生活を送っていた私は,あるバイオベンチャーに就職し,2001年にRNAiという技術に出会った.もとよりその分野に深く携わっていなかった私は,アンチセンステクノロジーなどの過去の失敗は知らず,ただそのパワフルな技術に魅了された.何とか日本にその技術を持ち込みたいと思い,当時RNAiツールとなるsiRNAを作製できた数社にコンタクトした.結果,Dharmaconという当時9名ほどのベンチャー企業が日本への技術導入の話に乗ってくれた.私は日本でのsiRNA独占販売権を入手して,とにかくsiRNA技術の周知に注力し,短期間で日本の多くの研究者にRNAi技術を紹介することができたと自負している.初年度は一社独占で販売していたsiRNAであったが,市場は数年でsiRNA黄金時代に突入し,その後は大手企業がRNA合成のできるベンチャーを次々に買収したため数年の間に大小合わせて10社程度が市場に参入してきた.2004年,RNAi技術の躍進とともに,我々のパートナーであったDharmaconもFisher Scientific Inc.に$80 million( 当時100億円程度)で買収された.また,当時,私が勤めていた会社がスタンフォード大学に近かったこともあり,in vivoでのRNAi効果を初めて示したスタンフォード大学のMark Kayと運良く知り合うことができた.そして後にAVOCELというRNAi創薬ベンチャーの立ち上げにも携わった.AVOCELはわずか1年半の業績でオーストリアの上場企業Benitecに$7 million(当時9億円程度)で買収された.
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