第2特集 軽度認知障害疑いの方を支える
軽度認知障害とプライマリ・ケア
MCIとうつの鑑別
山内 勇人
1
1在宅支援クリニック えがお
pp.1458-1463
発行日 2025年10月1日
Published Date 2025/10/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2025110017
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はじめに
軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)は認知症の前段階であり,この段階で適切に介入することで認知症への進行を遅らせたり,症状を改善できる可能性がある.筆者は公民館への出前講座を2012年より佐伯市と協働で取り組み,そのなかで認知症の疾患啓発や早期診断の重要性を伝えてきた.その効果もあり,MCIの段階からの相談や受診が増えている.
また,うつは認知症に合併しやすい精神症状の1つであり,認知症の初期から,抑うつ気分,興味や喜びの喪失,食欲不振,睡眠障害,意欲低下,集中力低下などの症状が現れやすい.認知症の初期段階においては,もの忘れ自体や日常生活での失敗・違和感などを覚えていることが多く,不安やうつを併発しやすい状態にあると考えられる.
一方,うつは,健康・役割・死別などの喪失体験が増えてくる高齢者において,罹患しやすい精神症状である.高齢者うつ病の特徴として,認知機能低下(仮性認知症)を伴うことも少なくなく,うつ病改善後も認知症に移行しやすいなどの報告1)から,認知症の危険因子と考えられている.
このように,高齢者にみられやすいMCI とうつ,MCI に伴ううつ状態,うつ病性仮性認知症などの診断・鑑別は,高齢者の日常臨床において重要である.

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