第2特集 “長引く咳” 診療をアップデートせよ!
知っておきたい! 咳診療の最前線
長引く咳と抗菌薬適正使用最前線
岸田 直樹
1,2
1Sapporo Medical Academy
2総合診療医・感染症コンサルタント
pp.910-915
発行日 2025年6月1日
Published Date 2025/6/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2025070022
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はじめに
「咳と抗菌薬」は抗菌薬適正使用では重要なテーマである.なぜなら咳の原因で最も多いのはかぜ(ウイルス性上気道感染症)であり,抗菌薬は不要だからだ.では,咳でも「長引く咳」と考えると抗菌薬が必要な疾患にはどのようなものが紛れ込むか? 咳は一般的に以下のように分類される1).
急性咳嗽:持続期間が3週間以内(21日以内)
亜急性(遷延性)咳嗽:持続期間が3〜8週間(22日〜56日以内)
慢性咳嗽:持続期間が8週間を超える(57日以上)
「長引く咳」を3週間を超える亜急性以降の咳と考えると,そのほとんどは感冒後咳や喘息といった非感染症であり,抗菌薬を考慮する疾患はさらに限られ,百日咳と抗酸菌感染症くらいであろう.そうなるとまずは適切な診断が重要であり,検査の項(p.73,78)を参照いただきたい.しかし,われわれが「長引く咳」という表現を医学的な定義というよりも日常的な言い回しで使う場合はどうであろうか? 一般的には,1週間(7日)程度でよくなるかぜの咳ではなく,2〜3 週間以上(8〜14日以上)続いている咳に対して「長引く咳」と感じる人が多いであろう.そうなると,二峰性の経過(先行するかぜの後に細菌性肺炎となる経過)で来るような市中肺炎を筆頭に,近年まれにみる大流行となったマイコプラズマが含まれる.本稿では,抗菌薬適正使用でも注目されているマイコプラズマと百日咳を中心に解説したい.

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