特集 疾患治療で薬剤性便秘を作るな!
場面別で解説! 予防と対策の最前線
救急外来での薬剤性便秘予防
狩野 謙一
1
1京都大学大学院 医学研究科
pp.936-939
発行日 2024年8月1日
Published Date 2024/8/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2024080015
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はじめに
症例では本当に患者の言うとおり,そのまま浣腸して帰宅させてもよいだろうか. 便秘は死亡リスクを高める疾患である.多くの日本の医学書では,慢性便秘症は「生活 の質(QOL)を低下させるが,生命予後には影響しない疾患」と記述されている.しかし, 近年の国内外の疫学調査から慢性便秘症患者の予後は不良であり,その状況は以前とは異 なっていることが報告されている.慢性便秘症患者の15年後の生存率は,慢性便秘症で ない患者よりも20%悪いとされている1, 2).
とくに慢性疾患を抱え,多数の定期薬を服用している高齢者は便秘の訴えでしばしば来 院する.救急外来は軽症から重症,小児から高齢者までさまざまな患者が来院し,混雑し 得るなかに便秘という訴えで来院する.また便秘から下部消化管穿孔や消化管出血などの 緊急を要する病態の合併もみられ,あなどってはいけない病態である.治療としての内服 薬がかえって患者の便秘を悪化させ患者の生命予後も低下させ得るため,浣腸や緩下剤以 外にも薬剤性便秘予防として救急外来でできる対応について述べる.
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