連載
腫瘍薬学ハイライト 抗体薬物複合体によるがん治療の進展
川西 正祐
1
1鈴鹿医療科学大学
pp.1048-1049
発行日 2023年4月5日
Published Date 2023/4/5
DOI https://doi.org/10.15104/ph.2023050044
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抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate:ADC)とは,抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた薬剤である.抗体はがん細胞の細胞膜上に発現する腫瘍関連抗原や,各種増殖因子受容体などに対するモノクローナル抗体で,分子標的薬的な効果を示すとともに,抗体の高い標的指向性を利用して抗がん薬など低分子化合物,放射性同位元素,毒素をがん細胞に特異的に伝達することができる.
ADCは細胞表面の標的分子に結合した後,受容体依存性のエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれ,リソソーム内部の酸性環境下でリンカーが加水分解される.そして抗体に結合した低分子化合物が遊離され,がん細胞を傷害し薬理活性を発揮する.そのため,ADCは従来の低分子化合物による化学療法と比較すると,安全性と有効性に優れた次世代型抗体医薬品として期待されている1).わが国で承認されているADCを表に示す.
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