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はじめに
高齢者や慢性疾患患者の増加から延命医療の見直しが始まり,生活の質(QOL)を重視した医療が行われるようになってきた.慢性疾患のなかで死因の1位であるがんは,働き盛りの死であり,治らない病気と考えられやすい.しかし,2015年には全がん患者のなかで62%が70歳以上になるといわれている58).それにもかかわらず,高齢者のがん末期についてその特質や,実態は明らかにされていない.
一方,高齢者は自分の死が近いことを予測している.高齢者の死は,それまでの人生の延長線上で,生をしめくくるという意味がある44).そのため,人生を完結させる準備としての死の迎え方が問われてくる.高齢者は家族の意向に従って行動することが多いと考えられる.しかし高齢者自身はどのような最後を迎えたいと考えているのか,特に苦痛を伴うがんの場合に,どこで死を迎えたいと望んでいるのかについて,援助をするものとしては理解しておく必要がある.
高齢者の意向を理解するためには告知が的確に行われることが前提となる.柏木14)は高齢者の場合は壮年のように身辺整理の必要も少ないこと,病名を知ったうえで何かを仕上げるという必要も少ないこと,自分の病気について医師に質問をすることも少ないことなどから,高齢者の告知はこれまで重要視されてこなかったと述べているが,その実態はどのようなものであるのか.そして高齢末期がん患者はどのような療養生活を送っているのか,療養するための条件はそろっているのか,などについて検討する.看護婦は,上記の特性を理解したうえで,高齢者が療養場所を選択できるように援助する必要がある.
高齢者や家族が落ちついて過ごせることを目的としたホスピスケアも選択肢の1つである.ホスピスケアは緩和ケア病棟などの施設内のみならず,在宅においても実施されてきている15).高齢がん患者が在宅ケアに移行する場合は,症状コントロールなど医療依存度や,介護依存度の高い患者が多いため,退院に向けての準備や調整も複雑になる.このため水準の高い退院計画が重要となる.
今回は高齢がん末期患者の療養生活の実態を明らかにするために,告知,死亡場所,末期療養の観点から,文献をもとにして明らかにし,看護援助の方向性を検討することを目的とする.
文献は主に,1988〜1995年の医学中央雑誌CD-ROM版により,また1995年は医学中央雑誌から検索によって得た.さらに「ターミナルケア」や「死の臨床」などの看護に関連する専門雑誌や,がんと高齢者に関する各種報告書や本から情報を収集した.一次資料ばかりでなく二次資料をも参考にした.収集した文献のうち事例研究に関するものは除いた.
なお高齢者を暦年齢だけで規定するのは難しいが,WHOの定義に従い65歳以上を高齢者とした.文献によって年齢の扱いが多少異なるものもあったが,65歳以上の特徴を示していると考えられるものは採用した.
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