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Ⅰ.緒言
高齢者が住みなれた生活環境を離れ、施設での新しい集団生活の環境を過ごすことは様々な困難が予想される。このような急激な生活環境の変化の中で高齢者は、孤独感を感じながらも、施設で新しい生活や他者との人間関係を作り出し、残りの人生を楽しく充実し終焉を迎えたいと考えている。わが国では、脱高度成長と人口の高齢化などから、量的な充足を求める時代から本当の豊かさとは何かを問う時代へと移り、平成2年頃から医療現場においても保健医療行為についてサービスという側面から見直す動きがでてきた。平成7年に日本医療機能評価機構が設立され、平成9年から諸活動が開発され、医療サービスの質の評価に関する研究が始められた(畑中ら、2003)。同様に福祉分野においても、高齢者介護施設の「サービスの質」が重要視されている。厚生労働省は、施設において提供される「サービスの質」を一層向上させ、多様化する利用者の生活に応じたものとしていくために、平成5年にその評価事業をスタートさせ、特別養護老人ホーム・老人保健施設の「サービス評価基準」(厚生省老人保健福祉局、2002)を開発し、高齢者介護施設におけるサービスの質評価への取り組みが始まった。しかし、高齢者を対象にした研究の中で、高齢者に対するケア評価に関する研究は平成12年頃からようやく着手され始めたばかりであり、サービス評価について未だ検討の余地が多く残されている。また、先行研究において日常生活援助やケア内容の評価に関連した研究は、医療施設での看護の質(岡谷、1995;堀内ら、1995;片田ら、1998;飯野ら、1999;杉本ら、2002)や患者満足度(生野ら、1995;加納川、1996)に関する研究は数多くされているが、高齢者施設での研究になると物的環境としての施設評価に関する研究はいくつかみられるものの、高齢者施設でのケアの質向上への指針を得ることをねらいとした研究は少ない(中嶋ら、2003)。さらに、看護分野での高齢者施設における日常生活援助やケアの質や満足度、ケアの認識のずれなどに焦点を当てた研究(斉藤、2001;住吉ら、2001;鈴木ら、2002;松澤、2003)は少なかった。浅野(1993)は、高齢者施設での入所者のニーズや満足感が充足されにくい問題点を指摘している。以上のことから、介護老人保健施設の入所者とケア提供者である看護・介護職者の日常生活援助評価に対する認識の相違を明らかにし、今後入所者が安心した施設での生活を過ごし、高齢者施設における看護・介護の質の向上に役立つための方向性を得ることを目的とする。
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