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I.緒言
わが国の年間死亡者数は増加傾向にあり,2030年には約40万人の看取りの受け入れ先確保が困難になると いう報告がある 1).そのなかでも,がん死亡数は年間約37万人であり,全死亡数の27.9%を占め,死因第1位である.厚生労働省は終末期がん患者の在宅療養を推進する政策を立てているが,なかなか在宅での看取りが進んでいない現状がある.遺族調査では自宅死を希望していると推定されるがん患者数は,がん死亡の31%であると指摘されている 2)が,実際のがん死亡のうちの自宅死は11.68%である 1).
在宅死を希望するがん患者が安心して最期まで在宅で暮らすためには,在宅医療・福祉の連携,24時間の支援体制,医療従事者の症状コントロールの知識と技術の向上,家族支援のあり方などが課題となる 3).また,終末期がん患者の在宅療養が困難になる理由として,症状のコントロールや社会的サポートの不十分さ,家族の介護負担などが指摘されており,がん患者が最期まで在宅で過ごすには家族の協力が不可欠 4)といわれる.
在宅で看取る家族は,看取りにともなう困難な状況や葛藤を解決するために折り合いをつけたり 5),在宅で介護しながら患者の病状悪化やそれにともない緊張を強いられる意思決定を迫られたりする 6)状況が報告されている.また,がん患者の家族がかかえる困難は,がん末期症状の認識不足により状況判断ができないことや身体症状への対応ができないこと,慣れない介護や疲労,患者の状態が悪化するなかでの沈痛な思いなどがあげられ 7),在宅療養移行や継続の阻害要因としては介護する家族への負担がもっとも多く,次いで急変時対応への不安が多い 8).在宅での看取りは家族にとって心身ともに大きな負担となるものであり,その負担を少しでも軽くしなければ在宅での看取りは実現しないといえる 9).
一方でがん患者の在宅での看取りは,達成感や家族関係の改善などポジティブな結果が顕著であり 10),看取りの経験は看取る家族に不安や負担を与えるだけでなく,看取りにともなう後悔を少なくしたり,家族の人間的成長に寄与したりする側面がある 11).在宅療養を行うことができる要因としては,必要な医療・介護サービスが確保できること,家族などの介護者が確保できること,本人・家族が在宅を強く希望することが主である 12).また,家族ががん患者を在宅で看取る覚悟を支える要因としては,在宅での看取りを受け入れる思いがあること,家族を取り巻く人々の協力が得られること,患者・家族の置かれた現状を認識し自己決定することがあげられる 11).また,がん患者の在宅療養は長くて3カ月で,その期間家族が覚悟をもって介護すればなんとかなる 13)という心理を抱く報告があり,在宅ケアの期間が限られていることを家族が認識できることが在宅での看取りにつながる 11)といえる.
しかし,先行研究によって在宅での療養を始める要因や,在宅療養を阻害する要因については明らかになっているが,在宅での療養の継続に関する要因については詳しく言及されていない.在宅療養が始まってから看取る最期の時までの期間を支える継続要因を明らかにすることは,在宅で生活するがん患者と家族の生活の質の向上と負担軽減につながると考える.
そこで,本研究では終末期がん患者が在宅療養の継続するうえで家族が支える要因について明らかにすることを目的とした.
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