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Ⅰ.はじめに
医療の発展に伴い,4つの主要がんである,胃がん,肺がん,結腸がん,乳がん,の治療の効果は,着実に改善を示している1).2010年には,全がん罹患者の中で仕事をもちながらがん治療のため通院しているものは32.5万人となっている2).具体的には,働きざかり世代の30〜59歳では,4人に1人ががんを罹患しており3),がんを慢性疾患と捉えて,健康維持していくことが定着している4).そして,これからのがん罹患者への支援は,現状の社会問題5)に対し,継続可能な具体策を明確にし,発展していく時代になった.
調査によると,がん診断後の仕事の継続希望は75.9%であったが,現実には転職,解雇,退職勧奨,廃業などがあり,がん罹患後の就労困難が報告されている6)〜8).その後,2012年(平成24年)6月第二次がん対策推進基本計画が開始され,Cancer Survivors Recruitingプロジェクトなどの生活支援や調査が活発になった9)10).その後,全がんの55.2%においては,がん診断後の働き方に変化がないことが示されている10).女性の社会進出が増加傾向にある中で11),乳がん罹患率は,20〜45歳までがきわめて高く,子宮頸がんは,20歳代後半から30代後半までの罹患率が増加しており12),両者ともに就労可能年齢であることから,女性がん治療後の就労支援はますます重要となっている.高橋2)は,女性就労者は,権利を維持し就労の可能性を見出せることから,早まった退職をすべきでないと述べている.しかし,調査によると,女性がんの公表は,就労の際に不利益になると捉えられ13),女性がん罹患を雇用者側に伝えていないものが26.3%であった14).これらの報告から,女性がん患者は社会に受け入れてもらえないという思いで生きている心理的背景が推測できる.Fantoniらの調査によると15),乳がん患者の復帰までの期間が長期になる要因は,治療の影響と考えられる倦怠感,瘢痕痛やリンパ浮腫などの後遺症,仕事に対する精神的な問題であった.さらに,リンパ浮腫の影響からの日常生活困難感や対処について,また仕事面においてはパーソナルコンピューターを扱う手作業が十分できないという結果がある16)17).子宮がん患者においては,術後の倦怠感の影響で就労困難をきたした事例より,倦怠感緩和ケアの重要性が述べられた18).また,子宮がん・卵巣がん術後患者の他者との関係において生じた困難体験に対する看護支援が検討された19).
今日,女性がん患者が,就労を継続し自立した生活維持を希望しても,現実には退職を余儀なくされている事例は多いと考えるが,具体的に離職を体験しがん罹患後の就労に対する女性がん患者の思いが語られている先行研究は見当たらない.
そこで,本研究では,離職経験を有する女性がん患者の就労に焦点を当て,就労に対する捉え方を明らかにすることとし,その結果から,女性がん患者の就労支援の示唆を得たいと考えた.
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