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Ⅰ.はじめに
がん治療や診断の進歩に伴いがん生存者が増加している.がん患者が最期までその人らしく生き抜くためには徴候や症状の緩和のみならず心の安寧を図ることが不可欠であり,近年西洋医学によらない全人的な治療を目的とした補完代替療法(complementary and alternativemedicine:CAM)を利用する患者が急増している1).2001年の厚生労働省の研究班が調査した結果2)では,44.6%のがん患者がCAMを利用した経験をもち,中でも健康食品の占める割合が圧倒的に多いことが示されている.
一方,日本のがん看護においては,CAMの科学的エビデンスに基づいた検証の不十分,医療現場におけるCAMの位置づけや標準的考え方の未確立,CAMに関する医療者の知識・情報不足などを背景として3)4),看護師がCAMを取り入れる患者・家族に十分対応できているとは言い難い状況にある.CAMに関する看護師の認識と経験ではマッサージや音楽療法,リラクセーションといった用手療法をCAMと認識する者が多く,がん領域に携わる看護師の大半がCAMを経験したことがないと回答している4)5).患者・家族はがんの進行抑制や治癒,抗がん剤の有害事象などの軽減を期待し,インターネットや情報雑誌・広告から独自にCAMの情報を入手し実施するのに対して,看護師は患者・家族からCAMについて相談されないかぎり積極的に介入することが少ない6).加えて,患者は「代替療法を取り入れたい気持ちを否定されるような気がする」「時間に余裕がなさそうで相談できない」など医療者に相談することを躊躇し,中には隠れてCAMを実施しているケースもある6).
このような状況から,CAMを取り入れたい患者と看護師との認識にはなんらかの相違があるものと考える.看護師の認識はどのようなものだろうか.鳴井ら7)によると,看護師はCAMを心身両面に作用し,その人の生活をより豊かにする可能性があるという理由から看護ケアに取り入れたいという考え方を示していることが報告されている.しかし患者との認識の相違を明らかにするためには,それらの内容をより具体的に明らかにする必要があると考えた.
そこで本稿では,質問紙調査で得られた自由記載を分析し,CAMに関する看護師の認識の実態を明らかにすることを目的とした.
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