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Ⅰ.はじめに
近年進歩の著しいがん化学療法において,副作用をコントロールしながらの治療継続や患者の服薬アドヒアランスを良好に維持することは,治療効果を最大化するために非常に重要である.カペシタビン(ゼローダ®)は,2003年4月に承認された経口抗悪性腫瘍剤であり,①手術不能または再発乳がん,②結腸がんにおける術後補助化学療法,③治癒切除不能な進行・再発の結腸がん・直腸がん,④切除不能な進行・再発胃がんに対する治療に用いられている1).臨床では単剤で用いられるほか,カペシタビンを併用する治療レジメンに変更されたことによってポートや注入ポンプの管理が不要となり,患者・家族の治療への負担感の軽減につながることが挙げられる.その一方で,患者・家族には内服による副作用の早期発見と適切な対処が求められるようになり,とりわけ併用療法では副作用症状が強く出現しやすいことから患者のセルフケアが求められる.
カペシタビンの代表的な副作用であるhand-foot-syndrome(手足症候群:HFS)は,抗がん剤によって起こる皮膚に対する代表的な副作用であり,手足の皮膚,爪の四肢末端部に紅斑,色素沈着を生じ,重度になると疼痛を伴う発赤・腫脹,水疱,びらんを形成し,知覚過敏,歩行困難,物がつかめない,歩行困難などの機能障害を伴う症状がみられる症候群である2).カペシタビン単剤投与のHFS発現頻度は59.1%,ほかの抗がん剤と併用の場合は76.6%に発現が認められており3),頻度が高い副作用のひとつである.日常生活に支障をきたすGrade2※以上の場合は休薬が推奨されており4),HFSの発現,悪化によって治療継続が困難となる状況に陥る可能性も高い.そのような状況を回避するためには可能な限りHFSの発現を抑えるとともに,発現が認められた場合にはできるだけ速やかな対処が必須である.通常診療では,HFSの予防のために治療開始時からビタミンB6剤の投与と保湿剤の使用が行われている5).しかし,カペシタビンの投与スケジュールは,14日間内服し7日間休薬,または21日間内服し7日間休薬となるため,患者が医療機関を受診するのは3週間または4週間ごとになり,その間,患者は自宅で内服管理と副作用予防のためのケアを行う必要があるため,患者・家族に対するセルフケア支援は非常に重要であるといえる.
これまで,HFS予防に焦点を当てた看護研究は,看護師の予防的介入の効果6)7),がん化学療法看護認定看護師が作成したパンフレットの有用性8),チーム医療の有効性9)について行われているが,カペシタビンを処方されている患者に対する看護支援の実態は明らかではない.そこで本研究は,全国のがん化学療法看護認定看護師を対象とした調査から,カペシタビンによるHFSの予防に対する看護支援,とりわけセルフケア支援の現状を明らかにすることによって,臨床の場で活用しやすい看護支援プログラムを検討するうえでの基礎資料を得ることを目的とした.
※Grade2:CTCAE v4.0日本語訳JCOG版による基準では「疼痛を伴う皮膚の変化,身の回り以外の日常生活動作の制限」10),Blum分類では「湿性痂皮・落屑,水疱,潰瘍,強い痛みにより日常生活を遂行できない症状」と定義されている11).
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