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1.はじめに
振り子はどちらに向いていけば良いのだろう.もちろん,看護の地域貢献という振り子のことである.看護の原型は人々の救済にあった.それは,家庭看護であり身近な人々が互いに助け合っていた看護であった.職業としての初期の看護は派遣による在宅看護であったが,次第に,看護は病院を中心とする施設内看護が主流を占めるようになってきた.近代になっての看護学は科学性を求めて真理の探究をしてきた.そのことが看護の発展に寄与したことは疑いのない事実である.しかしながら,科学の発展という振り子はややもすると地域貢献とはかけ離れた方向に向かってもいた.地域貢献ということを忘れたかのように.
看護が地域貢献していくのかそれとも研究室や実験室にとどまるのか.看護の価値は論文数で決まるのか.それは時に実践力の低下,臨床技術の低下を招かないだろうか.看護の価値は実践力あるいは臨床技術で決まるのか.現在,看護の基礎教育における看護技術の修得が論議されているが,その前に教員の看護技術能力を論議する必要はないのか.看護は,この振り子がどちらに振れているのかを意識しているのか.それとも意識していないのか.この事態を認識しているのか,それとも認識していないのか.看護は,このことに気づいているのか,あるいは気づいていないのだろうか.
人々は,看護をなくして健康的に暮らせるのだろうか.人々は看護に何を求めているのだろうか.きっと,安心して,安全に医療が受けられ,そして不健康な状態を治してくれる,あるいは悪化を防止してくれる,または,安寧な死に導いてくれることを期待しているであろう.さらに,生きている意味あるいは不幸にして健康を害したとしても,その体験に意味を見出せる手助けを望んでいることであろう.
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