ナイチンゲールの時代と現代の「取り残された人々」：COVID-19などの感染症に焦点を当てて

'People left behind' in Nightingale's time and today: Focus on infectious diseases such as COVID-19

1．はじめに

　2020年に感染が蔓延し始めた新型コロナウイルス感染症（COVID-19）による混乱は、世界規模で大きな混乱をもたらした。特に、感染が拡大し始めた当初は相次ぐ変異株の出現と症状の変化に人々は翻弄された。ウイルスが新型で適切な対応措置が不明であったため、様々な場面で、様々な原因や理由によって、程度の差こそあれ、すべての人々が何らかの形で社会や周囲の人々から切り離され、それまでの正常な日常を奪われて取り残された状態にあったといえる。そうした危機的状況を改善しようと奮闘した看護職者をたたえ、今後、取り残される人を出さないためにも、感染症が人々を脅かした過去を振り返り、現在を考察して、未来に備えようというのが本稿の趣旨である。19世紀初頭前後、フローレンス・ナイチンゲールが活躍した時代を中心に振り返り、これからに向けた提案を考察する。